2015年1月30日金曜日

ユネスコ地球市民性教育(GCED)フォーラム(2)

フォーラム2日目。テーマは、「平和をつくりだすための地球市民性教育」。

最初のスピーカーは、ユネスコチェアで、UCLAパウロ・フレイレ研究所の事務局長である、Carlos Alberto Torres氏。平和を阻害する要因として、不公正、貧困、新自由主義的グローバリズム、銀行型教育、文化の略奪と地球の破壊などを挙げた。

平和をつくる地球市民性教育で重要なのは、グローバルなシステムにアプローチすること、社会的政治的状況に対応していくこと、自分の知らない人と連帯することなどを、挙げた。地球市民性教育は、静かな革命であること。言葉に力があり、引き込まれるスピーチだった。

2人目は、平和教育に関する国際研究所(IIPE)のTony Jenkins氏。平和教育を個人の変容と社会や文化の変容に分けて整理し、参加者に「この3日間であなた自身の変化を意識していますか?」という問いを投げた。Jenkins氏には、アメリカでお世話になったので、久しぶりの再会がうれしかった。
IIPEのジェンキンス氏と
その後、2人のスピーカーの後、司会が壇上に招待したのは、トルコ大学の教授だった。先日のパリでの銃撃事件について、この重荷をフランスだけで抱えてはならない、今、トルコは、シリアから160万人の難民を受け入れている。この問題はトルコだけでは抱えられない問題だし、問題の背景も含めて世界が考えるべきことである。そして地球市民性教育はこのような問題を考え、解決する力をつけないといけないことを切実に話された。

実際に今、中東やアフリカで起きているイスラム国などの問題に触れないで、平和について語るのは違和感があった。分科会では、多様性や人権の尊重、宗教や文化を超えた対話などをテーマにしたものがあったが、全体会ではあまり触れられなかった。

全体会の後、フランスの地球市民性教育(開発教育)プラットフォーム、Educasolが主催するセミナーに登壇するため、地下鉄で会場に向かった。Educasolは、約20の国際連帯や開発教育に関連する団体が集まったプラットフォームで、2年前から「開発と国際連帯のための教育」の概念や言葉について議論を進めていたようだ。そして、2014年の総会で、正式に「開発」という言葉を使うのをやめ、「市民性と国際連帯のための教育」と呼ぶことにしたという。

セミナーのタイトルは、「地球市民性教育:世界の挑戦」。参加者は開発教育や地球市民性教育に関わる市民組織や、NGO、地域のボランティア団体、外務省、教育省、農林水産省、自治体、などに関わる約100名。登壇者は、私の他に、セネガルの教育NGOの、シェイク(Cheikh Mbow氏)と、ブラジルのNGOのマヅダ(Madza Enir氏)そして、司会はDEEEPのアナ(Ana Terresa氏)だ。
地下鉄で 左から、アナ、シェイク、マヅダ
私のプレゼンでは、あえて、DEARが「開発」という言葉を使い、「開発」についてさまざまな方面から考え、事業に反映してきたこと、ESDの成果と課題、日本で地球市民性教育を実施する場合の注意点、ポスト2015の取り組みなどを話した。

セミナー「地球市民性教育:世界の挑戦」の様子
セネガルのシェイクは、メディアを含め、多様なステイクホルダーを巻き込み、子どもたちに必要な教育を届ける活動を、ブラジルのマヅダは、若者が主体的に動く場を支援する活動を紹介した。

参加者は興味を持って聞いてくれた。フランスの若者からの質問は、郊外にいる社会から疎外されている若者たちにアプローチしていく方法を知りたい、というもので、ブラジルのマヅダは、根気強く働きかけ、銃で殺す以外の方法があることを、少しずつ伝えていくしかない、と経験を通して語り説得力があった。

セミナー「地球市民性教育:世界の挑戦」の様子
最後に、「フクシマはどうなっていますか?」という質問を受け、今の状況をかいつまんで話した。フランスの原子力推進について、フクシマから学んでほしいことも伝えた。フォーラムの後も、多くの参加者が興味を持って質問に来てくれた。「開発」についてその言葉や意味を深く検討してきた人たちだったので、「さまざまな開発があること、誰にとっての開発か」などの議論は重要で、共感できる、と後でコメントしてくれた。

ユネスコのフォーラムでは会えなかった、フランスにいる草の根の実践者に会えたのはうれしかった。年に2回フランス全土から集まって、セミナーやワークショップをするらしい。DEARの全研みたい。フランス語ができたら、ワークショップも覗きたかったが、ランチを食べて、ユネスコに戻った。

最後の分科会には間に合い、2015年以降の教育目標の枠組み作りの分科会に参加した。ユネスコが作った「行動計画のための指針と戦略」のドラフトにコメントを出し合った。

私は政策のグループにいたが、政策の話なので、教育だけでは足りなくて、様々なレベルの政策に影響を与えていかなければならないこと、知識や技術については、地域や文化の多様性に配慮すること、などの意見が出され、私は、GAP(グローバルアクションプログラム)で書かれているような、教育の再方向付けを目指し、変容を促すものであるべきことを、主張した。

先ほどの実践者との話し合いとは次元が異なり、抽象度が高まる。しかし、実際に各国、各地域の行動計画に落としていくには、地球市民性教育(GCED)とESDに関する教育のターゲットと指標が、「自分たちのもの」にしてもらいやすいこと、その上で政策も含めた教育の再方向付けがすすめられるような、革新的なものにしていく必要を感じた。

明日が、最終日、ポスト2015の行動の枠組み案、どんなものがでてくるのか、報告します。
(報告:中村)

2015年1月29日木曜日

ユネスコ地球市民性教育(GCED)フォーラム(1)

ブランス、パリより事務局長の中村です。
第2回ユネスコ地球市民性教育(GCED)フォーラムに参加しています。
パリは、どんより曇り空ですが、思ったよりも寒くないです。
パリに着いてちょっと散歩
本フォーラムの目的は、「ポスト2015」の教育目標のターゲットの一つとしてESD(持続可能な開発のための教育)も含んだGCEDを提案するために、GCEDの現在の傾向や未来の必要性を考え、GCEDの優先的な戦略や政策を決め、行動の枠組みを作ることです。

62か国から約250名が参加。主に、教育者、研究者、政策立案者、国連関係者、市民社会、ユース代表、UNESCO関係者などです。基本、招待状がないと参加できないので、私が参加できたのも、CONCORDのリリーさんたちが、UNESCOに掛け合ってくれたからです。感謝!
開会式の様子
開会式では、UNESCO事務局長のIrina Bokova氏のあいさつがありました。今年UNESCO設立70周年を迎えることから、UNESCOの平和のビジョンを強調していきたいこと、社会の相互依存関係が強まり、暴力ではなく寛容の力で若者を市民にしていくことの重要性、ESDの10年の成果も受けて、GCED(地球市民性教育)がますます必要になっていることが話されました。

その後、基調講演は、チュニジアのAl-Bawsalaという団体の代表であり、アクティビストのAmira Yahyaouiさんの力強いスピーチ。教育は、子どもだけではなく、親に対しても必要である。まず、違いを理解し、受け入れるための教育が必要。子ども時代を奪われた子どもたちがたくさんいること、そのような状況でどのような教育が必要なのかを考えてほしい。中東では、25歳以下の若者が人口の半分を占めること、だから、将来の政治的決定をする若者の市民性の教育が必要であることを話してくれました。

その後全体会で何人かが話したのですが、一番印象に残ったのは、インドの大学教授 Peter de Souza さんの話。今の教育システムが、構造的に社会的弱者をつくっていることを批判し、グローバリゼーションの影響を受けた教育がグローバルエリートをつくる教育になっていることに気付くべきである、と述べて拍手をもらっていました。つい、日本のグローバル人材のことを思ってしまいました。

午後の分科会では、前半は、「GCEDの学習成果を図る」という分科会に参加しました。分科会の目的は「ポスト2015」の教育目標のターゲットの一つとしてGCEDとESDを統合し、共通する評価指標を考えることでした。そこでは、7人のスピーカーが検討しているそれぞれの評価指標を報告しました。
分科会「ESDの成果と今後」
そのなかで、態度や価値観の変化をどのように測るのか、地域によって測れるものと測れないものがある、子ども全体の変化をどのように測るのか、変化は測れるが、その背景や影響を明確にすることは難しい。などの質問・意見が出てきました。指標だけみていると、学習者の姿が見えなくなってしまうのは問題ですね。

OECDからは、PISA2015の指標には、社会的情緒的(social emotional)な指標が入ること、そして、PISA2018の指標には、グローバルなコンピテンシーの指標が入ることが報告されました。そのことによるいろいろな影響が予測されます。そもそも評価の目的が、現状を把握し、その教育を見直すことになっていればよいのだけど、外から評価されることだけを目的にすると、本末転倒だなとも思いました。

後半は、「ESD世界会議の成果:今後の行動に向けて」に参加しました。UNESCOのESD課長のAlexander Leicht氏と、インドのNGO、CEE(Center for Environmental Education)の事務局長のKartikeya Sarabhai氏の報告を受け、ESDの10年の後の行動枠組みである「グローバルアクションプログラム(GAP)」の優先分野に分かれて小グループで話しました。

この分科会に参加している多くの参加者は、ESDとGCEDの関係が気になっていて、私が参加した「政策について」のグループでは、GAPをGCEDの行動枠組みや、評価指標に活用するように提案しようという話になりました。他に参加していたコスタリカからの参加者は、名古屋のESD会議に教育副大臣が参加したことで、一気にESDの支援が進んだそうです。そういう意味では場合によってはトップダウンも必要かと、思いました。
レバノン料理屋で
その後、歓迎会が開催され、みんなとひとしきり交流した後、CONCORDのリリーさんとDEEEPのアナさん、エイミーさんと、ホテルの近くのレバノン料理屋さんへ。種類が豊富でおいしかったけど、みんなの話し声が大きすぎて、途中で、他のフランス人の客が露骨に嫌な顔をしていたのに気付き、私は一人で恐縮してしまいました。でも楽しかったです!
(報告:中村)