鎌倉女学院国際セミナーでワークショップ

初めまして。ボランティアの岩岡です。
6月10日(土)、鎌倉女学院高校のフィールドワーク国際セミナーに参加しました。

DEARでは、鎌倉女学院の高校1年生を対象に、「コーヒーカップの向こう側」と「本当に地球にやさしいってなんだろう?(パーム油のはなし)」の2つのワークショップを、午前と午後の2回ずつ実施しました。各回にそれぞれ30名程度の生徒が参加し、とても賑やかで活発なワークショップとなりました。

コーヒーカップの向こう側



最初にアイスブレイクと、5~6人ずつ5グループに分かれた状態でチームビルディングを行い、コーヒーと聞いて思い浮かぶものをできるだけたくさん紙に書き出しました。一番多くて30個近く書きだしたグループがあり、中にはコーヒーのCMに登場する芸能人の名前なんかも出てきました。

次に、コーヒーにまつわるクイズを行いました。日本では、年間一人当たり約350杯のコーヒーが飲まれており、消費量も世界で4番目に多いのですが、これには生徒たちも驚きの声をあげていました。そして、コーヒーの生産工程の写真の並べ替えを行ないました。

特に盛り上がったのが、このワークショップのメインとなる、コーヒー農家の家族となってコーヒーの契約栽培をする疑似体験です。各グループを農民の家族として、役割とグループ名を決めます。営業マンが1年ごとに登場し、次の年の契約をしていきますが、1年ごとに市場価格や契約条件が変わっていくため、どのグループも区画数を真剣に悩みながら決めていきました。


そして突然、4年目の契約をもって企業から一方的に契約打ち切りとなります。生徒たちからは、「えーっ!」「契約する時には何も言ってなかった!」「5年目以降はどうなるんだろう?」などの声が上がり、戸惑っていました。コーヒー農家の立場や、企業との力関係の差を体験することで、農家が抱える不安や、生活(収入)の不安定さを認識していました。

最後に、各グループでふりかえりを行い、感想を全体で共有しました。また、こういった問題の根本は一次産品ばかりを作り続けることであることや、解決策の一つとしてフェアトレードの仕組みや商品を紹介しました。参加した生徒たちからは、以下のような感想や気づきが挙げられました。

  • お金がないと学校に行けず、十分な教育が受けられない。企業と契約をする際に、文字が読めない場合は不利になってしまい、悪循環となってしまう。
  • 不利益な契約をさせられている農家がどれくらいいるのか、知りたい。
  • 実際にコーヒー農家が生活したり働いたりする様子を見てみたい。
  • コーヒーの市場価格が毎年変動するため、区画数を決めるのが難しかった。もっと農家の利益を保障してほしい。
  • 区画数を減らす際に違約金がかかることや、契約期間を事前にきちんと農家に伝えてほしかった。
  • 企業と農家が対等になれない原因は、私たち(消費者側)にもある。
  • いつもは何も考えずに買い物しているけど、これからは安さばかりだけではなく、フェアトレードの商品などを積極的に選んでいきたい。

本当に地球にやさしいってなんだろう?(パーム油のはなし)


最初にアイスブレイクを行い、生徒たちが普段食べるお菓子について聞いてみました。アイスが圧倒的に多く、その次にクッキー・チョコ、和菓子と続きました。また、「地球にやさしい生活をしているか?」という問いに対して、半分以上の生徒たちが「まあまあそう思う」と答えており、地球にやさしい例としては、ゴミの分別や節水などが挙げられていました。

次に、6人ずつ5グループに分かれて、グループごとにお菓子や洗剤などのパッケージを配り、その共通点を紙に書き出しました。細かい成分表示まで見ていくと、どれも共通して植物性油脂が使われていることに気付き、植物性油脂にはどのような種類があるか挙げていきました。

特に、世界で消費量が最も多いパーム油をピックアップしてクイズを行い、パーム油の特徴について学びました。パーム油は、収穫量が他の植物性油脂に比べて多く、匂いがないため、加工品に利用しやすいといった特徴があります。また、植物性は動物性よりは環境にやさしいのではないか、安心・安全なイメージがあるといった意見が出ました。

(写真:峠隆一)
次に、パーム油の生産過程の写真の並べ替えを行い、そのストーリーを考えました。労働者がマスクとゴーグルをつけて除草剤を撒く写真や、児童が油ヤシの実を拾う写真などもあり、生産過程を通して、その生産に関わる人々やその労働実態、現地に住む先住民族について学びました。

続いて、このワークショップのメインである、開発会議(ロールプレイング)を行いました。各グループのごとに、農園開発の賛成派(政府役人、農園開発企業、洗剤メーカー、先住民族の村長)と反対派(環境保護NGOスタッフ、別の先住民族の村長)の役を決めます。全員がその役になりきって白熱した議論を交わし、最終的に地図上にプランテーションを作るための境界線を引きました。

開発会議の結果や、その結果に至るまでの話し合いの経緯はグループによって異なり、どのグループもそれぞれの立場の違いや、開発の難しさについて体験できたようです。また、開発会議の後に、実際にパーム油農園の近くに暮らす先住民族の生活の様子をビデオで鑑賞しました。

最後に、「私たちに出来ること」を1週間から50年の期間(1週間、1年、3年、10年、50年)ごとに、それぞれの立場(自分/家族、学校、地域、企業、日本政府、国際社会)で考えました。パーム油について、もっと知識を深めたり、周りの人に伝えたり、将来的には次の世代(子ども)へ教育する、選挙に行くなど、先を見据えたアイディアも挙げられました。また、今後のアクションとして、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)や認証パームといった取り組みを紹介しました。

各グループのふりかえりでは、以下のような感想や気づきが挙げられました。

  • 普段買っている商品の裏にこういう問題があることを初めて知った。
  • パーム油の問題は途上国で起きているが、消費者として間接的に自分たちも関わりがある。
  • 先進国が、利益のみを追求するのは良くない。
  • 今日学んだことをもっと深めて、周りの人(家族など)に伝えていきたい。
  • 熱帯雨林の伐採は、環境問題にもつながっているので、世界の現状をもっと知りたい。

どちらのワークショップも、熱心に話を聞いて積極的に参加してくれた生徒たちの姿がとても印象的でした。また、「こういった分野の仕事に興味がある」と終了後に相談に来た生徒もおり、生徒たちの今後の活躍がとても楽しみに思いました。
(報告:岩岡)

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