ポスト2015教育アジェンダに向けたオープンセミナー(ASPBAE50周年記念事業)

5月24日(土)13時~15時に、富坂キリスト教センター会議室で標記セミナーを開催しました。

アジア南太平洋基礎・成人教育協議会(ASPBAE)とは、アジア南太平洋地域の教育NGO・研究者等のネットワーク組織です。教育分野におけるグローバルな提言活動を行っており、今回のオープンセミナーは、ポスト2015の教育課題について議論するために開催されました。ASPBAEはユネスコパリ本部のEFA運営委員会(EFA Steering Committee)の市民社会からの参加メンバーであり、当面の目標は、2014年7月に行われる「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」へ報告、提案することです。


ASPBAEから50周年ロゴ入りの記念グッズが届きました
1964年に設立されたASPBAEは今年50周年を迎え、記念事業も兼ねています。DEARはASPBAEの日本会員団体で、同じく会員団体である教育協力ネットワーク(JNNE)、シャンティ国際ボランティア会(SVA)の協力で本セミナーを主催しました。


プログラムは次の通りです。
  1. ASPBAEについての紹介/上條直美(DEAR副代表)
  2. ポスト2015の教育課題について国際的な動向についての解説・JNNEの取り組み紹介/三宅隆史(JNNE、SVA)
  3. ASPBAEの政策提言についての紹介(上條)
  4. 「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」最終年を迎えて~市民からの発信/中村絵乃(DEAR事務局長)
  5. グループディスカッション
  6. まとめ
三宅さんからは、ポスト2015の教育開発の課題ということで、EFAの進捗状況(EFAグローバルモニタリングレポート2013/14)の報告、ポスト2015開発アジェンダ策定プロセスの確認、教育協力NGOネットワーク(JNNE)による「ポスト2015の開発課題の教育ゴール、ターゲット、指標についての提案」が報告されました。「多くの国が2015年までにEFAゴールを達成できない」現状や、「阻害された人々に教育が届いていない(特に女の子)」状況、さらに教育予算がGNPの6%を超えている国は、150か国中41か国しかないことなどが指摘されました。日本もその中の一国です。

三宅さんによるポスト2015の教育課題について国際的な動向についての解説&JNNEの取り組み紹介
中村さんからは、「ESDの10年」最終年ということで、ESDユネスコ世界会議(名古屋・11月10日~12日)の開催やそれに向けてESDJ(持続可能な開発のための教育の10年推進会議)が「地域と市民社会からの提言フォーラム」を開催し提言づくりをしていることなどが情報共有されました。8月20日~21日には、「ESD の10年・世界の祭典」推進フォーラム主催事業「ESD地球市民村」が開催され、ここで議論が集約されるということです。DEARとしては、市民社会、開発教育の立場から関わりを持つことになると思います。同時に、市民社会の中でも本会議に向けた議論を行おうという動きがあることも報告されました。

会場の様子
グループディスカッションではASPBAEからのリクエストによって、「ポスト2015の教育課題に関連したキーワードをあげること」「ASPBAEのアドボカシーへの意見」について議論しました。議論の中で出てきたキーワードの一部をあげると次のようになります。
  1. 市民性
  2. マイノリティからの声
  3. 十分な教育予算
  4. 持続可能な開発
これからの教育を考えるうえで、社会課題を見る視点を養うこと、行動へつなげること、自分たちの意見を意思決定へ反映させていくことなどの力は、市民性教育の中で養っていくことが必要ではないか、という意見や、EFAなどでは途上国の教育課題が喫緊のものとして当然ながらあげられるが、日本のような国の中の教育課題も同様に重要だという意見がありました。ESDについては、まず「持続可能な開発」の概念のとらえ方として、「複数形」の開発(developments)の重要性があげられました。持続可能な開発の概念は、それぞれの地域や社会の文脈に根差した形で実現されるべきものです。開発とは一律ではなく複数形、つまり多様であるということを認識し、その多様性を尊重しあうことが大切です。学校内外の教育活動でESDを取り上げる際は、そのことに十分配慮していかなければならないということが共有されました。

グループワークの様子
ASPBAEの教育アジェンダへの意見としては、
  1. 人間の尊厳(いのちの尊さ)が教育のベースであり、そこへの言及をすべきである。
  2. 学校教育における画一的なカリキュラムの問題点、例えば農村地域と都会の格差を助長するような方向性には注視する必要がある。
  3. 学校外教育の重要性を強調すべきである。
  4. 宗教や文化の問題をどう扱うか。
  5. 先進国における教育課題にも言及してはどうか。
などの意見が出され、ポスト2015教育アジェンダという大きなテーマにも関わらず活発な意見交換がなされました。
提案されたキーワードの数々
オープンセミナーの報告は、ASPBAE理事の上條直美より、ASPBAE事務局へ上記のような内容で報告されました。
(上條)

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