第9回「国際成人教育協議会世界会議(WA)」 レポートその4

こんにちは。評議員の近藤です。
水が合わないのか、体中がちくちくかゆいです。
今日も朝から晩まで「education」でした。

■6月12日(金)

9:00-10:00 課題別ガイダンスの全体会

新ICAE事務局長のカタリーナ(セルビアときいたのですがウルグアイかもしれないです)の挨拶から始まりました。モデレーターは、アジア太平洋成人教育協議会(ASPBAE/アスベ)代表のロビー(オーストラリア/フィリピン)です。昨年の名古屋ESD会議でも、5月の仁川の教育フォーラムでもDEAR代表参加メンバーとご一緒だったと思います。

ASPBAEとは、成人教育のアジア太平洋ネットワークです。
昨年、事務局の星さん、理事の三宅さんと私で40周年のFestival of Learningに参加してきました。詳しくは、そちらをご参照ください。
ちなみに、さらに10年前のニュースレターには、30周年のFestival of Learningの私と事務局の西さんの報告連載があります(ちょっとだけ若い私たちとともにお楽しみください)。

話を戻しまして、ロビーのユーモラスでインタラクティブな進行は、手内がわかっていてもついつい笑ってしまいます。身体を解放し、声をあげて、という成人教育の基本を、会議出席者に向かっても求めます。ちゃんとほぐすんだなー、と改めて思いました。

今回のWAのシンボルイラストでもある絵が描かれた紙が事前に配布されていました。


自分の名前と、活動の核を書いて、隣の人と話す時間をくれました。
私の隣は、カナダのオタワからきていた男性で、仏語話者であるマイノリティや移民の方への言語学習と職業トレーニングをしているとのことでした。仏語圏のケベックではマジョリティでも、英語圏のオタワではマイノリティだなんて不思議な気がしました。

その後、「私はこれからの会議で○○について話し合うことを楽しみにしています」という○○をフロアから集めました。
  • テクノロジーへのアクセス
  • 学習者の声は聴かれているか
  • 政策立案者をどのようにして包摂するか
  • 雇用をどうやってつくるか
  • 雇用だけが幸せなのか
  • 教育の民営化・財政の問題
  • 職業研修のあとの就職について
  • 変革の必要性
  • 正義について、ジェンダーへの正義について、などが出てきました。
そして、今回の会議で提起されている5つの課題のガイダンスです。
  1. 2015年以降のすべての人のための教育・生涯学習への権利
  2. アドボカシーのキャパシティビルディング
  3. 成人学習とESDの役割
  4. 成人学習と教育、力関係とコミュニティ活動
  5. すべての人への質の高い包摂的な教育

課題1の担当ネディラ(ペルー)からのメッセージです。
5億人以上の成人の非識字者がいるという事実に何もしないということはありえない。差別をしないとはどういうことかについてを考えたい。またESDについても、社会、経済、文化的な質の側面から話したい

課題2の担当セルジオ(ブラジル)です。
「課題2は、昨日のジェンダー部会で話したこととつながります。善い人生・くらし、より善い人生・暮らし、より善い日、すべての人がどうやって、より善い人生・くらしを手にすることができるのか、ということです。問題にあふれた世界で生きる私たちには、憎しみや差別の行動があります。では、それに対抗する行動を創っていかなければならないのです。非植民地化(decolonization)は、異なる人たちとの対話をとおした、あらゆる差別に抗するメンタリティです。政治家は人々が有している権利にどれだけせまれるのか、市民組織の動きが重要です」

課題3担当のロビーは他のモデレーターを紹介して終わりました。

そして課題4のポール(カナダ・ケベック)の言葉です。
「職業を手にするために研修を受け、就職してもまた失業し、また研修を受けることを繰り返す人たちがいます。仕事を得るために何度も研修をうけるのです。しかし、私たちはそうした研修で、交渉、民主的手段を学ばなければ、自分の権利を行使することができません。得るも失うも給料も交渉なのです。民主主義を学ぶのです

セルジオとポールは親友・戦友で、パウロ・フレイレのもとで学んだ経験があります。IALLAでは講師陣でした。

課題5のマヤは、デジタル・テクノロジーへのアクセスについて考えたいとのことでした。教育の質、といったときの質とは何を意味するかを話したいと言っていました。


記入した自分の活動と5つの課題を示したシートをみんなで示して、
さあ、会議に入ろうという合図に紙をみんなで振りしました。

11:00-13:00 パネルディスカッション グリーンピース・カナダとの対話

グリーンピース・カナダのパトリックとロビーの2人が壇上に立ち、対話をしました。

夜の食事でもみんな同じ感想でしたが、正直パトリックの講演は、どこかで数字を確かめればわかる気候変動のデータのオンパレードでした。温暖化、二酸化炭素放出量、気候変動による影響などです。期待はずれでした。

私のただひとつの形をなしているメモは、以下です。
「人間が気候の変化に影響を与えていることは明らかなのです。だから人間がどうにかしなければなりません」

一方、環境教育専門のロビーはさすがです(と感じました)。
「ESDの中心には、なぜ気候がこんなにも変わったのか?を核にしなければならない」
「インドと中国の人口が先進国並みに消費をしたら地球はもたないとしたら、どんな教育が私たちに必要なのか?ということに焦点をあてなければならない」
「フィジーの子どもたちが環境教育を受けて生活行動が変わったとしても、それがフィジーだけのためなのではないわけだ。どうやってお互いに協同していくかを考えていかなければならない」

パトリックとロビーのコントラストの面白かったところは、
SDG's(持続可能な開発目標)のうちパトリックは、目標7「すべての人が手ごろで、信頼ができて、持続可能で近代的なエネルギーにアクセスできることを保障すべきである」を太字で大きく掲げていたのに対し、

ロビーは、目標4である
「すべての人々への包括的かつ公平な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」が一番重要だと言っていたことです。

パトリックは科学を学んだバックグラウンドの人ですが、科学的マインド・倫理と教育的マインド・倫理の相違、つまり立場や見方がこんなに違うんだよ、ということを明確に示せる場がもっとあったほうがいいのではないかなと思いました。

DEARの何かでそういうコントラストが明確になった場面があったかな、と思い返しました。が、招かれる科学的マインドの方は、「飛んで火にいる気の毒な方」になってしまいますね。
迷惑はなはだしいかもしれません。
パトリックをみて、ちょっとそう思いました。

次回に続く‥
(報告:近藤)

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