『TOKYOアイヌ』の上映会をやりました

新横浜のスペースオルタにて、ドキュメンタリー映画『TOKYOアイヌ』の上映会を行いました。

これは、「DEAR授業づくりサークル」の活動の一環として企画したものです。「授業づくりサークル」メンバーは、夏の北大での「開発教育全国研究集会 in 札幌(全研)」でアイヌの歴史や文化、自然との共生などを分科会やフィールドスタディで学びました。

全研のフィールドスタディで二風谷を訪れた(2015年8月)

すっかりアイヌについて学ぶことが面白くなってしまった私達は、首都圏に住むアイヌの人たちのドキュメンタリー映画があることを知り、自主上映会を行おうということになったのです。

そこで出会ったのが、首都圏アイヌを取りまとめ、中心的な活動を行っている、島田あけみさん(チャシアンカラの会代表)です。「アイヌについて知りたければ自分達も少しは努力して上映会に人を集めるように」とのミッションを受け、代わりに島田さんから上映後に直接お話を聞けるチャンスをもらったのでした。

その結果、会場にはたくさんの来場者が集まり、大変興味深く引き込まれる映画とその後の島田さんの熱い語りをみんなで共有することができました。

たくさんの方がご参加くださいました

「首都圏に暮らす5000人とも1万人ともいわれるアイヌ民族。どこにいようと自らの民族を生きることは、日本人を含め、あらゆる民族に共通の課題としてある。だが、日本の近代化はアイヌがアイヌとして生きることを許してこなかった。その苦難の道を選びとった首都圏アイヌの様々な声がいま発せられる。 

2008年6月、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認定した。だが、その意味を受け止める人びとはまだ少ない。この映画は首都圏アイヌの声を通して、その事実のふくらみを、この時代を生きる隣人どうしが、真正面から受け止めあうために、世に送り出された。」

…という解説がつけられている映画『TOKYOアイヌ』ですが、登場人物一人一人の語りには、それぞれの人生や苦悩、思いが込められていて、大変考えさせられる興味深い内容でした。

前半は、エカシやフチ*の語りと人生史が中心となっていますが、映画が進むにつれて、登場する人たちの関係性が明らかになり、後半はアイヌの未来に向けて若い世代へと焦点が移っていく構成などにも引き込まれるものがありました。苦悩を経験しながらも、今後のアイヌの未来を前向きに考えていこうとする彼らの姿に、私は共に歩むことや、彼らから学ぶべきものがあることを考えました。
*アイヌ語でエカシは「おじいさん」、フチは「おばあさん」という意味。「長老」という意味も。

当初は、映画の主人公として撮影されていた浦野治造エカシの、力強くも率直で素直な生き方には、ほれぼれするものがありました。以前気になって手に入れた本『アイヌ式エコロジー生活』に似たようなおじいさんが写っていたなと思ったら、なんと治造エカシでした!


それに、先日中野で行われた沖縄とアイヌの交流イベント、チャランケ祭でカムイノミという儀式を行っていたおじいちゃんも、治造エカシだったのです。私にとってすごく治造さんが身近に感じられるようになり、彼(彼ら)からもっと色んなことを学びたいなという気持ちです。

上映後には、島田さんの熱い語りを聞きました。小さい頃は隣人のシャモ(和人)を助けて暮らしていたにも関わらず、彼らから距離を置かれて辛い思いをしたことや、結婚後の親戚づきあいで感じた違和感などをきっかけに、逆にアイヌとしての自分を取り戻し、誇りをもって生きる決意をしたという話です。


眼光鋭く心に訴える島田さんの語りに、会場全体が引き込まれていく感じがありました。

アイヌについて身近に感じる人や、まだまだ知らないことばかり、と思う人など参加者は様々でしたが、それぞれが有意義な時間を過ごせたと思います。その後の打ち上げでは、なんとアイヌ解放活動の核であり首都圏アイヌの拠り所ともいうべきフチ、宇梶静江さんとお話する機会を持とうという展開になりました!

終了後、主催者&参加者でふりかえりを行いました

今後の「授業づくりサークル」でどのようにアイヌから学びアイヌをテーマとする授業づくりができるか、楽しみにしているところです。(報告:秦さやか)

参加者アンケートより(2015.12.15加筆)
  • 自分の無知がひらかれる思いでした。すぐ近くの新横浜で、アイヌの人たちの活動があるなんて‥、驚きの連続でした。
  • 自分が「倭人」だったということに、ショックを受けた。アイヌのことを教育の中でしっかり扱っていくべきだと思った。
  • アイヌの人から直接語られるアイヌの人びとの思いや苦難など、初めて見るものばかりで来てよかったです。
  • 当事者が声をあげているのに、マジョリティが無視している。構造的に見えなくしている状況には、怒りを感じる。
  • 新宿、横浜、芝、都庁など、見慣れた風景の中にアイヌの人たちの活動があることに全く今まで気付いていませんでした。
  • とてもよい映画でした。アイヌの人たちがどんな思いで生きてきたか、伝わってきました。アイヌを捨てるために東京に来たのに、アイヌを求める‥。民族のアイデンティティー、自分は何者なのかという思いが湧いてくるものなのですね。

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