【レポート】レジリエンスを育む小学校~ブラジルのオルタナティブスクールでの学び

5月27日(土)、この日はDEARの会員総会の前に、元DEAR職員であり、1月から4月までブラジルのシュタイナー学校でボランティアをしていた星久美子さんの現地報告&ワークショップがありました。5月とは思えないほど暑い中、30名以上もの方にご参加頂きました。
ヤポ!ヤポ!イェ~イェ~イェ~♪
まずは星さんの自己紹介、そしてアイスブレイクとして、ブラジルの子ども達に人気のゲーム「YAPO!」を体験。歌いながら身体を動かすゲームで、動きを間違えてしまったり、速い動きについていけなくなったりと、アイスブレイクどころかセルフサービスで置いていた麦茶も底をつき、冷房も「強」にするほどアツいゲームでした。

その後はブラジルにまつわる、リオのカーニバルやファヴェーラ(スラム)、日本からの移民についてのクイズ。ブラジル人の陽気さ、貧富の差、他民族さを再確認しました。


そこから「モンチアズール・コミュニティ協会」の話に移ります。この協会は、ブラジルの中流階級の子ども達の通うシュタイナー学校の教師であったドイツ人のウテ・クレーマーさんが、1975年からモンチアズールというファヴェーラの住民達と、診療所や保育所、学童、そして小学校(2010年~)、助産所(2015年~)を作りどんどん活動を大きくしている団体です。御年79歳のウテさんの若々しさと情熱は留まるところを知らず、日々活動は進化しています。


星さんは、そのモンチアズール・コミュニティ協会の建てた、シュタイナー教育の精神に則った私立小学校にボランティアとして入りました。



海外の学校ということだけでも日本とは違う点が多いだろうと思いますが、星さんの話と写真は、日本の“学校”のイメージをことごとく塗り替えていくものでした。

  • 1学年1クラス
  • 各クラス生徒20人ほどで先生が2人
  • 教室は1つずつ離れて建つバンガローのような家で、教室内にキッチンがあり給食は教室で作る。
  • 登校したら朝のフルーツ、授業後の朝ご飯、1時間の休み時間、みんなで作る給食(野菜などは協会が有機栽培で育てたもの)、下校時には帰りのフルーツを食べる。
  • 授業に集中できず、立ち上がって走り回ってしまう子はキッチンで一緒に給食を作り、料理の中に勉強を織り交ぜていく。
  • 授業は一つの科目(単元)を2週間ほど毎日同じ教科をに続けて行なう。等々‥
面白い学校のシステムに、参加者からは「えー!?」など感嘆・驚愕の混ざった声が漏れます。

職員会議の様子。全員輪になってひとりの生徒のことを考える。
更に面白いのは、職員会議の様子。気になる生徒がいると、担任の先生だけでなく、事務担当者、菜園担当者などを含む全職員でその生徒のことだけを考える会議をします。会議の中ではその生徒のことを考えながら絵を描き、その生徒になりきって考え、親も交えて話し、たとえ発達障害があると気づいていてもその名前は出さず、ひたすらその生徒のことを考え、向き合う・・・それがモンチアズール流の職員会議ということで、愛にあふれた学校の話に心があたたかくなりました。

ここで、実際に職員会議で行なったワークショップを体験してみることに。一人一枚、「自分の子ども時代」をお題に紙に絵を描きます


参加者は久しぶり(何十年ぶり?)に触るクレヨンにちょっと興奮している様子。大人になるとクレヨンを使うことはおろか、絵を描くことも少なくなりますよね。絵を描き始めるとつられて色々な懐かしい記憶が蘇ってくるようで、風景画、自分の姿、物(太陽、蝶々、ネギボウズなど)など様々な絵が描き上がりました。


他の人と共有すると、習い事や外遊びなど色々なエピソードが飛び出し、人それぞれの子ども時代に場が盛り上がります。そんな中、星さんが一つ質問を投げかけます。「なぜ、これを職員会議でするのでしょうか?」それに対する参加者の一人の答えが印象的でした。

「先生は普段生徒や他の先生の前で自分のことをオープンにすることがない。逆に自分のことを隠してしまう。自分のことをオープンにすることは自分を見つめ直すきっかけになる。そして、自分の子ども時代のことを考えることで、より生徒の言動や状況を理解できるようになる」

これは、日本でもとても有効なワークショップだと深く実感しました。また、星さんによると、モンチアズールの職員会議は全員が輪になって行なうそうで、それにより雰囲気も良くなるとのこと。日本でもそんな職員会議が出来たら面白そうです。

星さん、ありがとう!
来年3月にはウテ・クレーマーさんが来日し、講演会も行なうようです。ウテさんの情熱や手法に興味のある方は、ぜひご参加ください!
(報告:木村明日美)

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